刑事コロンボ「指輪の爪あと」の感想。初期の傑作エピソード。

初期の傑作エピソード。コロンボシリーズのエッセンスが詰まっている。

犯人は大きな探偵社を経営する敏腕私立探偵。妻の浮気調査の依頼を新聞王から受け、浮気の事実はなかったという嘘の報告をして、それをネタに妻を強請ろうとする。妻はそれを拒否し、すべてを明らかにしようとする。逆上した犯人は、妻を殴り殺してしまう。

シリーズが進むにつれて、犯人の人間像を描く作品が増えてくるが、このエピソードはシンプル。傲慢な上流階級の犯人とそれをじわじわと追いつめるコロンボという設定で、コロンボ対犯人という基本線に重点が置かれている。

無能な刑事を演じて犯人を油断させ、鋭い観察力で徐々に圧力をかけて追い込んでいく。犯人もコロンボの有能さに気づいて応戦する。ラストも秀逸。あざやかに犯人をトラップにかける。このシリーズ特有の倒叙ミステリーのパターンがはっきりとしている。

コロンボはどんなドラマかと訊かれたら、こんなのだよと言って挙げるのにはふさわしい作品。