映画「ドクトル・ジバゴ」(1965) 壮大なロシアを描いた作品。

帝政末期からロシア革命にかけて、一人の医師を主人公とする壮大な物語。

医者であり詩人でもあるジバゴ。不幸な境遇から医師になり、革命の混乱に巻き込まれ、波乱の人生を送ることになる。しかし、たとえどんな境遇でも、二人の女性を愛し、高潔な生き方を貫く。

体制が変わろうと、状況がどうなろうと、誇り高い生き方を選択する主人公。ただ、彼のような妥協のない生き方は、いつの時代でも難しい。

高潔な主人公との対比で、現実主義者のコマロフスキーと革命家のパーシャが描かれる。世の中がどうなろうと、俗物的な生き方をするコマロフスキー。欲しいものは手に入れようとするし、保身にためならなんでもする。ただ、良心のかけらは残っており、ジバゴに救いの手をさしのべたりもする。一方、あまりにも思想に傾倒し人間性を失っていくパーシャ。革命家としての芯はとおっているが、情を感じさせない人物となっていく。

決して、主人公を通じて愛情であるとか人間の素晴らしさを表現しただけの作品ではない。よいことも悪いことも、喜びも悲しみも、すべて包み込んでしまうロシアの大きさ。

愛人がよそにいようが、汚いことをする人間がそばにいようが、理不尽なルールに打ち負かされようが、それらをすべて包み込んでしまう壮大なロシア。よいことも悪いことも、喜びも悲しみも、これがロシアだという描き方をした映画。