刑事コロンボ「黄金のバックル」の感想。謎を残して終わるエピソード。

以前、コロンボファンの友人と会ったときに、一番の駄作は何かという話になった。ふたりとも「黄金のバックル」と言い、あまりにもつまらなくて内容を覚えていないで一致した。

改めて見ると、出来はよくないが、そんなにひどくもないのではと思える。

犯人は、上流階級の一族が経営する美術館の女性館長。経営を巡って対立する弟を、警備員をそそのかして殺害する。灯りの件、腕時計の件などから、コロンボは犯人を追い詰める。最後は心理的に自白に追い込む。

犯人の計画は穴だらけなので、コロンボがいつものように追い込んでいく手法には目新しさはない。謎を残したまま終わるのがこのエピソードの特徴。姪は誰の娘なのか、犯人は元婚約者の姉の夫を殺したのか。とくに愛する姪を犯人にしようとしたのはなぜかという疑問は残る。人間関係の重きを置く横溝正史作品のような終わり方をするのかと思ったが、うやむやになってしまった。

家族関係の描き方が不十分で、こういった尻切れトンボのような終わり方になったのかと思う。全体的に雑なつくりだが、逆にそこにあれこれ考えを巡らす楽しみを残してしまった作品。

犯人の姉が失神したり、ドレスを破かれるシーンは、クルーゾー警部を思い出させる。ここまでコミカルな演出は、コロンボシリーズでは珍しい。