刑事コロンボ「ホリスター将軍のコレクション」の感想

このシリーズには珍しく犯人と目撃者の恋物語が進行する。

朝鮮戦争の英雄であるホリスター将軍は、退役後に元部下と共謀して不正を働いていた。監査が行われることになり、秘密を漏らす危険がある元部下を自宅で射殺する。それを海上のボートから女性に目撃されてしまう。犯人は目撃者に近づき、それとなく懐柔しようと試みる。

探偵ものであっても、事件と同時にサブのストーリーが進行する。軽妙なトークが主体で、登場人物が自身の物語を語りだすテンポのよい展開。こういうソープオペラのような構成は70年代のアメリカドラマにはよくあった。チャーリーズ・エンジェル、署長マクミラン、ロックフォード氏の事件メモなど。コロンボではこういったパターンは珍しい。コロンボと知能犯がゴリゴリやり合う本筋のみで展開するものが多い。不評であったのか、その後本作のようなパターンはつくられなくなった。

この作品自体が、初期のものの中ではあまり人気がない。ストーリー的に犯人がそれほど狡猾に描かれていない。被害者の遺体が発見された時点で、芋づる式に悪事が露見するのは目に見えている。手がかりをレストランの主人から得て一挙に解決というクライマックスはまあまあだが、凶器を隠さない犯人とは何なんだというところかな。軽いノリなので全体的に緊迫感が感じられない。

ちょっと違った雰囲気の作品を見たいならよいかもしれない。ホリスター将軍役のエディ・アルバートは「ローマの休日」にカメラマン役で出演している。