刑事コロンボ「仮面の男」感想。最後の小話の謎解き。

スパイもののような筋立て。「祝砲の挽歌」にも出たパトリック・マクグーハンが犯人役。被害者役には「裸の銃を持つ男」のレスリー・ニールセン。個人的には好きなエピソード。

犯人は、経営コンサルタントを装うCIA情報部員。同僚に二重スパイの素性を知られたため殺害する。コロンボは疑問点を持つが、犯人がCIAを通して圧力をかける。最後はコロンボ得意の観察力で追い込む。

クライマックスでは、もう一歩踏み込んで欲しかった。これでは「5時30分の目撃者」のように、殺人そのものの立証にはなっていないだろう。

犯人が仲介の元囚人を殺さなかったのは、スタインメッツが存在することを証言してもらうため。これはCIA向け。既に圧力により殺人捜査を妨害したので、コロンボは眼中にない。

最後の小話は

Columbo “Would you like to hear something funny?”
Brenner “I’d love to.”
Columbo “Today, Chinese…they changed their minds.”
Brenner “Did they, again?”
Columbo “They’re back in the games…”
Brenner “in the games….Mah-Jong.”
Columbo “Mah-Jong.”

訳すと

Columbo 「小話があるんですけど。」
Brenner 「ぜひ聞きたいね」
Columbo 「今日、中国人がね、中国人が気を変えたそうです。」
Brenner 「そうかい。またかね。」
Columbo 「ゲームに参加するそうです。」
Brenner 「君が言っているゲームは、オリンピックではなく麻雀のことだろう。」
Columbo 「そうです。麻雀のことですよ。」

表面上は、中国のオリンピック不参加の話をしているようで、麻雀の話に落とすところが面白いのだろう。

だいたいこんな意味だと思うが、深読みして、ChineseはChinaからCIAと、gamesは犯人が関与した職務と読みかえれば

Columbo 「小話があるんですけど。」
Brenner 「ぜひ聞きたいね」
Columbo 「今日、CIAがね、CIAが気を変えたそうです。」
Brenner 「そうかい。またかね。」
Columbo 「ゲームを再調査するそうです。」
Brenner 「わかったよ。君が言っているゲームは、オリンピックのことではなく、私の仕事のことだろう。麻雀をそろえた豪華な生活が捜査されるということだろう。」
Columbo 「麻雀(マイジョブ、my job)ですよ。」

追い込みが不十分だったので、今度はコロンボがCIAを使って圧力をかけ、自供を翻さないようにする。
会話の雰囲気から、これはちょっと考えすぎかなと思う。

原題の”Identity Crisis”は、最初は、CIAの圧力により刑事としての職務遂行が困難になったコロンボのアイデンティティの危機。最後は、犯人がスパイとしての身分を利用して私腹を肥やした悪行が暴かれるという危機。