刑事コロンボ「別れのワイン」感想。ベスト20で1位

コロンボシリーズ最高傑作と言われる作品。ランキングは不動の1位。

犯人は、ワインこそが我が人生というワイナリーの経営者。ワイナリーを売ろうとするそりの合わない弟を発作的に殺してしまう。スキューバダイビング中の事故に見せかけようとするが、コロンボは天気、車、食事をしていないことなどから疑いを持つ。最後は犯人のワインへの情熱がコロンボに決め手を与えてしまう。

ミステリー的にもなかなか面白く、逮捕のきっかけを犯人の情熱とからませたところがうまい。

この作品の魅力は、ドナルド・プレザンス演じる犯人のワインにかける情熱が非常によく表現されている点だ。犯人は私利私欲に走るような悪役ではなく、むしろ純粋な人物。だが、ワインに入れ込むあまり、他の人を近づけないような孤高な雰囲気を醸し出している。
更に、ワイナリーのシーンが多いためヨーロッパの田舎のような映像が多く、全体的に落ち着いてきりっとしまった感じを受ける。

原題の”Any Old Port in a Storm”を調べてみた。 “any port in a storm” という慣用句がある。意味は窮余の策。嵐の中を漂う船は、どんな港でもよいから入港したい。

英語のタイトルでは、港のportをポート・ワインにひっかけていると思われる。ポート・ワインはアルコール度数が高く保存が効く。コロンボは貯蔵庫に自ら閉じ込められる実験をしたとき、その後の会食を考えていて、それなりのワインをくすねようとしていた。暑さに強いポート・ワインが酸化しているなら、全部のワインがだめになっていて証拠となる。そのためレストランでの食事に見合ったビンテージのポート・ワインを短時間に探す必要があった。コロンボとしては、何でもよいから年代物のポートを見つけなければという心境であったということかな。

余談になるが、犯人に結婚をせまった秘書役のジュリー・ハリスは、イギリスの短編ドラマ「予期せぬ出来事」にも出演している。原作はロアルド・ダールで、かなり前に東京12チャンネルでも放映していたちょっと不気味なウイットがきいたドラマ。
こちらのシリーズで傑作に入る「ビクスビー夫人と大佐のコート」(Mrs. Bixby and the Colonel’s Coat)にジュリー・ハリスが主演している。このエピソードはYoutubeでも見ることができる。