ウィリアム・リンク著「刑事コロンボ 13の事件簿」の感想。

刑事コロンボの原作者の片方であるウィリアム・リンクが書いた短編集。

時代はドラマから少し下っていて、携帯やイラク戦争などが出てくる。13の短編が収められており、倒叙式とそうでないものがほぼ半々。

コロンボは、旧シリーズほどの切れがあるわけではない。犯人もそれほどの知能犯たちでなく、「コロンボ相手に、そんな証拠を残しておくなよ」と言いたくなるような話が何本もある。謎解きも、そんな落ちでまとめないで欲しいと思うものが大半だ。

それでも、出てくるのはあのコロンボだ。慇懃無礼にセレブたちにまとわりつく。うちのカミさんの話も健在。犯人の丁重な対応が徐々に横柄となって、あせり色を濃くしていく。そしてコロンボの手の内にすっぽりと入っていく。ピーター・フォークの演技が目に浮かぶ。

コロンボファンがコロンボを味わうための作品。アメリカドラマでしか味わえない多彩な固有名詞の中で、ヨレヨレコートのコロンボが闊歩する姿は、あの70年代の続きを見ているようだ。