映画「上海から来た女」(1947)の感想。オーソン・ウェルズ主演、監督。

1947年のサスペンス映画。オーソン・ウェルズが主演、監督を務める。

主人公のマイケルは、資産家の弁護士の妻を助けたのが縁で、夫の弁護士に船員として雇われる。ヨットで航海に出ると、同乗している顧問弁護士グリズビーから奇妙な儲け話を聞かされる。その計画に乗ろうとしたところ、グリズビーが殺されてマイケルは逮捕されてしまう。

魅惑的な美女と上流階級の優雅な生活に怪しげな人物からの儲け話が絡んで話は進む。当然ながら、その儲け話には胡散臭い雰囲気があり、スリリングな展開を予想しながら話を追う。するといつの間にかストーリーに引き込まれていく。

主な登場人物は限られる。主人公と女、夫の弁護士、顧問弁護士の4人。それぞれが個性豊かな演技を見せる。女の妖艶さ、夫のパワフルさ、顧問弁護士の胡散臭さ、そして主人公の揺れ動く気持ち。どれをとっても一級品だ。

ストーリーに沿っての場面の切りかわりの鮮やかさは見事。上流階級の華やかな生活と女の美しさと表とすると、雑多な夜の繁華街、犯罪まがいの密談には裏の暗さがあり、それらを対比させることで話が締まる。終盤の裁判から逃走、真相の解明と、最後までテンポのよさを失わない。

サスペンス劇をつくるための手法が巧みに取り入れられている。さすがにオーソン・ウェルズ。