映画「カリスマ」(1999)の感想。黒沢清監督、役所広司主演。

黒沢清監督、役所広司主演ホラー風の映画。

犯人と人質を両方死なせてしまい、心に深い傷を負った刑事藪池は、森でカリスマと呼ばれる一本の木に出会う。その木を守る青年とつきあううちに、木を巡る争いに巻き込まれていく。そして自分自身も木の虜になっていく。

カリスマという一本の木を守る側と排除する側の間での激しい争い。それぞれの言い分があり納得できる部分もあるが、互いに相手の主張には耳をかさない。泥沼の対立に陥ったときによくある構図だ。

彼らを、伝統的な価値観を守る人たちと最新の知識で不都合なものを排除しようとする人たちと見ることもできるだろう。しかしこの映画は、そういう単純な価値観の対立だけを言いたいわけではないらしい。いったい何が争いの根本にあるのかを提示するような展開をたどっていく。

キノコの話は示唆的。一部の毒キノコのために、すべてのキノコを食べることをしないという当たり前の考え方がある。しかし実は貴重な食料にもなるキノコを、そういった価値観で切り捨ててしまっている。ほとんどの場合は食べても大丈夫なのに、なぜそこまでしなくてはならないのかという問い。キノコを食べて生きる人も死ぬ人もいるという当たり前のことを受け入れようとせず、死はだめだという一方的な考え方は、ある倫理観にとらわれて他者と共存できなくなった社会を指し示しているように思える。

結局、最後にはカオスのような状況が描かれるが、争いに陥ったそれまでの状況と変わらないのではないかという深い提言のように思える。