古畑任三郎第36話「追いつめられて」( 雲の中の死)の感想。犯人役玉置浩二。(ネタバレ)

コメディタッチの異色エピソード。犯人は西洋美術研究家を演じる玉置浩二、舞台は成田に向かう機内。

古畑任三郎シリーズでは、古畑が犯人を追いつめる過程が一番の見どころ。逆に言えば、古畑に追いつめられてジタバタする犯人を見て楽しむわけだ。

このエピソードは、後者を取り出してコミカルタッチで描いている。敢えて犯人にとって厳しい状況を設定し、いたぶられて苦悶の表情をみせる犯人を笑いの種にして楽しむことになる。

事件が起きる前から、犯人には相当苦しい超アウェイの状況。機内という逃げられない空間で、右座席には身分を明かしている古畑任三郎が、左座席には自分を召使い扱いする鬼嫁の妻にはさまれている。

席をたつと、何と浮気相手の女性と遭遇してしまう。このわがまま放題のお嬢さんは、浮気がばれることなど何とも思っていない。慌てる犯人は、彼女をトイレに引っ張り込んで説得を試みるが、誤って殺してしまう。まったく意図せずに事件発生。

いつもの犯人たちは、完全犯罪のために完璧な準備を行ってから古畑と対峙するか、それなりの猶予時間はあるが、今回はぶっつけ本番で無防備状態。

早速、現場から逃げるときに子供に顔を見られてしまう。試合開始直後に満塁ホームランを浴びたような状況だ。

その後、でまかせで副操縦士のふりをするが、一人二役を演じる落語家のようになってしまう。

こんな苦しい状況でも、今泉は丸め込むことはできる。だが、さすがに西園寺の追求まではかわすことはできなくなる。今回は開店休業状態の古畑の前でお縄になる。

ミステリー的には、ほとんど何もなく、写真のトリックくらいだ。高木彬光「白昼の死角」などで使われて、人の認識の違いを利用した古典的なもの。

今回は主役は古畑ではなく、犯人役の玉置浩二だ。冷や汗をかきっぱなしの熱演。ビール飲まなきゃやってられないし、キャビア全部持ってこいと言う犯人に同情したくなる。

古畑任三郎喜劇バージョンとしては面白いが、三谷幸喜作品としては少しトーンが抑えめエピソード。