映画「帝銀事件死刑囚」(1964)の感想。

1948年に起きた帝銀事件を描いた作品。熊井啓監督。

戦後間もない混乱の時代に起きた大量毒殺事件。判決確定後も平沢死刑囚が冤罪を訴え続けて、たびたびニュースでも取り上げられたきた。

前半は、事件を詳細に再現していて、かなりのリアル感がある。掘っ立て小屋のような銀行支店に、国民服を着た犯人は、時代を感じさせてくれる。新聞記者の取材活動を通じて、事件の真相が徐々に明らかにされていく。彼らは熱い。抑圧を受けた戦時中の反動のように、正義の味方のごとく真相に迫ろうとする。しかし、肝心のところには届かない。

後半は、平沢死刑囚のほぼ一人舞台で、その描き方が絶妙だ。画家であり、知識人でもある人柄と、二転三転する証言とが混在して、とらえどころのない人物像として画面に登場する。いったいこの人はどんな自分なんだと思いながら、知らず知らずに画面に引き込まれてしまう。平沢を演じる信欣三の熱演だ。

この映画が公開されたのは昭和39年で、判決は出ているが実質的に継続中と言える状況。政策にはかなりの困難がともなったと予想できる。そういう意味でも、よくできていると思う。