古畑任三郎第20話「動機の鑑定」の感想。犯人役澤村藤十郎。(ネタバレ)

澤村藤十郎が犯人役の骨董店主人を演じる。骨董界の内部で起きる殺人事件。

犯人の骨董店店主は、美術館館長と共謀して贋作で荒稼ぎをしていた。しかし、著名な陶芸家が贋作をつくって二人を告発しようとしたため、強盗を装って殺害してしまう。古畑の捜査が進むにつれて、館長は怖じ気づいて自首しようとしたため、犯人は自殺にみせかけて殺してしまう。

骨董という目利きたちの世界を舞台とすることが、ミステリアスな要素が更に加わって、よい雰囲気を出している。業界用語の使い方がうまい。何より、犯人役の澤村藤十郎の柔らかな物腰がよく、古畑との掛け合いが大きな見どころとなっている。

ミステリーとしての手がかりがあるが、なかなか追い込めない古畑。解決編のトリックは、刑事コロンボ「仮面の男」のものだが、それだけでなく骨董の蘊蓄まで絡めた謎解きにしている。

最後に、古畑でさえ解けない謎を、犯人が告白するところがこのエピソードのクライマックス。推理ものとしても申し分ないと思う。

大変出来がよく、シリーズの中でも最上位にランクされるエピソードだと思う。45分の通常版で、よくこれだけ詰め込んだと思う。欲を言えば、犯人の動機が欲得ずくでなく、やむにやまれぬ事情からであれば、物語作品として刑事コロンボ「別れのワイン」に類する傑作になっていたと思う。