映画「断崖」(1941)の感想。ヒッチコック監督、ジョーン・フォンテイン主演の心理ミステリー。

ヒッチコック監督のミステリー作品。ジョーン・フォンテインがアカデミー主演女優賞を獲得した映画。

ジョーン・フォンテイン演じる主人公は、地元の名士である将軍の娘であった。ある日偶然知り合ったケーリー・グラント演じる男と駆け落ち同然に結婚してしまう。しかし、夫は陽気はあるが、競馬で借金をしたり、変なビジネスをしたりと、うかがい知れない面を持っていた。次第に夫への疑惑が大きくなり、自分の命をも狙っているのではと思い始める。

終始、ヒロインのジョーン・フォンテインの揺れ動く心理描写が軸になる。堅物の令嬢が心を奪われて駆け落ち、そして疑惑が生まれる結婚生活、更に夫への猜疑心と不安に苛まれる日々と、微妙な変化を見事に演じている。

それと対比して、ケーリー・グラントは、遊び人で憎めない間抜けぶりと、時折見せる謎があるような顔つきと、とらえ所のない役回りをうまく演じている。

ミステリーとしての筋立てがしっかりしているわけでもなく、最後は、拍子抜けするような終わり方をするが、それまでの起伏を楽しむための作品と言えるだろう。

ほぼ一人の女優だけで、こんな映画をつくってしまうヒッチコックの手腕に感心する。