老齢をむかえたSF大作家による美食を中心とした日記。
年齢とともに食は細くなり、そばを食べてお茶漬けをすするようになるもの。それなのに九十歳になろうという著者は、一流ホテルのレストランをはじめとする名店を食べ歩く。その健啖ぶりには驚くばかりだ。体にエネルギーあってこその美食であり、それが創作意欲のもとになっているのだろう。
日々贅沢なメニューが書き連ねてあっても、成金的ないやしさなど感じさせない不思議な魅力があるのは、著者であってこその特殊技術だ。支払額まで明かしてくれていることで、むしろリアル感が増し、高級料理をむさぼり食う様子まで浮かんでくるようだ。
こんな生活をしていたら、いったいどれくらいお金がかかるのだろう、という下世話な疑問にも答えてくれている。1年で1000万円くらい預金残高が減っているそうだ。ため息が出る人がいる一方で、とくに若い人のなかには、オレも頑張ってこういう生活をしよう思う人もいるだろう。ただの美食日記でなく、一種の自己啓発本にもなっている。
筒井日記文学はこうでなくては面白くない。まだまだいけるね。

