映画「裏窓」(1954)の感想。ヒッチコック監督の異色のサスペンス映画。

ヒッチコック監督の異色のサスペンス映画。

主人公はカメラマン。足の骨折のため部屋に閉じこもっているうちに、反対側のアパートを覗き見るようになる。そしてある部屋で、妻が姿を消すとともに夫が不審な行動をとっていることに気づく。殺人事件ではないかと警察の友人に知らせるが、相手にしてもらえない。

他人の生活を覗き見るというだけでも小さなスリルを感じる。その覗きの視点から、事件らしきものが起きるのを発見する。すべては見えないので、想像せざるを得ない状況となり、否が応でも心理的なドキドキ感が高まる。

そうやって、目に見える小さな世界から、想像の不安な世界に、観客を引き込んでしまう。

最後までこの視点をくずさないのもうまい。遠くから眺めるもどかしで、いっそう不安感をかき立てられる。さすがにヒッチコック監督ならではの斬新な方法だと思う。

ストーリーは、いつもの心理サスペンスで感じるほどの緊迫感はない。主人公の探偵ごっこで終わるのではないかという緩い雰囲気の中で進む。

そこにいつものように美女登場となり、グレイス・ケリー美しさと可愛らしさが際立つようにカメラがまわる。

本格サスペンスとは言えないが、覗きという行為を心理的にうまく使った映画だと思う。