映画「間違えられた男」(1956)の感想。ヒッチコック監督作品。

ヒッチコック監督のサスペンス映画。

主人公のバンドマンは、身に覚えのない強盗の容疑で逮捕されてしまう。無実の罪をはらそうと、妻とともに弁護士や証人を訪ね、証拠集めに奔走する。その心労のせいで、妻は心を病んでしまう。

ヒッチコック監督のいつもの心理サスペンスとは異なり、日常生活に潜む怖さを扱っている。事件捜査から逮捕、裁判と、現代社会のシステム化された一連の手続き。犯人と似ているという自分ではどうしようもない特徴があるだけで、このシステムに乗ってしまうと、逃げるすべがない。

朴訥で真面目な男を演じるヘンリー・フォンダの演技がうまい。手の打ちようのない状況に陥ったときの不安げな表情。それがあきらめにも似た顔つきになっていくところが逆に怖い。

主人公の妻役のヴェラ・マイルズは、「サイコ」で被害者の妹役。刑事コロンボ「毒のある花」では、犯人である化粧会社の経営者を演じた。