綾辻行人著「十角館の殺人」書評感想

著者のデビュー作で、本格ミステリーのエポックメイキングとなった作品。

十字形の館が建つ孤島に、大学のミステリ研の7人が訪れた。やがて、学生たちが次々に殺されていく。疑心暗鬼の中、メンバーによる捜査が進むが、同時に元メンバーが島外でも真相を探り始める。

クリスティーの「そして誰もいなくなった」を思い出させるような設定で、いかにも謎解きものというストーリー。

本格ミステリーだが非常に読みやすい。登場人物にミステリ作家のニックネームがついていたり、わかりやすい地図が挿入されているだけでなく、無駄な描写があまりなく、ミステリーに必要な耐えて読み進めるところが少ない。こういった類いのミステリーをあまり読んだことのない人にも優しい作品だと思う。

限定愛蔵版で読んだが、33人の執筆陣によるエッセイのおまけもついている。発表後、30年以上も経ってこういった限定本が出るくらいの傑作。