高村薫著「リヴィエラを撃て」の感想。

著者によるスパイ小説の代表作。

アイルランド、イギリス、香港、日本と移り変わる壮大な物語だ。乾いた筆致と精密な描写は、まるでジョン・ル・カレを読んでいるような気分になる。とくに前半のIRAのテロリストたちの部分は迫力がある。親切な説明はないので、少しずつ輪郭を読み解く必要があり、なかなか国内の小説ではお目にかかれないスタイルだ。

ジョン・ル・カレとの違いを言えば、個人の思いに重点を置いていること。カレは人を通して組織や体制の圧倒的な力を描いた。本作では主人公は入れ替わるが、共通するのはそれぞれが持つ思いだ。強大な組織や体制のもとで、それにのみ込まれまいとしてもがく個人の姿が描かれる。物語としては、筋の通ったの登場人物たちが、思いの強さからときには暴走し、命の危険をもおかすという展開。個人の思いに殉じる姿は劇的だ。

敢えて難を言えば、最終盤はやや失速ぎみ。一気に種明かしをして、それまでの重厚感が消えてしまっている。謎を未回収のまま放置できないのはわかるが、やはり日本の小説なのかと少し残念な気分になった。