斎藤淳子著「シン・中国人」の感想。

激変する中国社会を庶民目線でリポートとした新書。

鄧小平時代の改革開放以来、急激な経済成長を続ける中国。生活水準は上がっただろうが、そこに住む庶民の生活がどのように変化しているのか。本書では、恋愛結婚事情を軸にして、滞在経験豊かな著者の目を通して、中国人のリアルな生活が描かれている。

恋愛結婚は人生の生活設計において重要な出来事。その後の生活水準、子供の教育と受験、仕事、住宅、親との関係など、人生全般に関わる一大事だ。そのため人々の持つ価値観の違いがリアルに反映されやすい。中国には、共産党支配、農村部と都市部の格差などの特有の社会的要因の影響も大きい。そういった環境のもとでの一般庶民の生活感覚は、あまり知ることのできない中国人の姿で興味深い。

とくに親とのジェネレーションギャップはいろいろと問題を引き起こしているようだ。急激な発展のため、日本で言えば、自分と孫から曾孫世代くらいとのギャップが親子の間にあるという現象が起きている。文革世代とスマホ世代では、なかなか話が通じない。旧世代と若い世代では、同列に語ることができないくらいに考え方に差がある。中国を見るときに、注意しなければならない点になるだろう。

それからもうひとつ興味をひかれたのが、合理主義最優先といった風潮があること。急激な発展の裏返しになると思うが、もともと生存競争が厳しい中国の特有の事情もあるのだろう。とにかく良い生活を送りたいという庶民の願望がダイレクトに反映した社会だ。

メディアで目にする中国に関する話題では、統計や国際ニュースをもとに分析したものがほとんどで、リアルな中国人の生活と考え方を知る機会は意外と少ない。本書に書かれた情報は本当に貴重だと思う。