映画「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」(2017)の感想。スピルバーグ監督。

最高機密文書「ペンタゴンペーパーズ」が流出した事件をもとにした政治サスペンス映画。スティーヴン・スピルバーグ監督、 メリル・ストリープ、トム・ハンクス出演。

ベトナム戦争が泥沼化する70年代の初め、国防省の最高機密文書「ペンタゴンペーパーズ」が流出し、ニューヨークタイムズにスクープされてしまう。すぐに政府側から圧力がかかり裁判沙汰になる。後追いとなったワシントンポストは、核心の文書を入手し、その記事を載せようとする。

スピルバーグの映画づくりのうまさが光る。前半は必要以上の説明はせず、複雑な背景説明を断片的な場面で示すのみ。そのため観客は集中してストーリーを追わざるを得ず、否が応でも引き込まれてしまう。

大筋が明らかになると、記事を載せるか載せないかの決断をする中盤のクライマックス。豪腕編集主幹のトム・ハンクスの迫力に魅せられる。

そして最後のクライマックスは、社主メリル・ストリープの印刷GOの最終判断。控えめな性格の発行人に毅然とした態度をとらせることで、国民の代表というシンボリックな人物像をつくりあげている。

文句なしに面白い映画だと思う。ただ、少しやり過ぎ感はある。対権力を際立たせるために、国民の側の英雄物語になってしまっている。さすがに、切れものマクナマラの弱々しいキャラには違和感はある。もう少し貫禄のある人物として描いてもよかったのではないだろうか。

最後のウォーターゲートも、権力から距離を置く立場を示すにはよいかもしれないが、やはり蛇足だと思う。