映画「ボビー・フィッシャーを探して」(1993)の感想。チェスの感動映画。

チェスの天才少年をめぐるヒューマンドラマ。周りの大人たちが見せる細やかな愛情と純粋な少年の物語。

主人公はチェスの天才少年。その才能に気づいた両親は、チェスの才能をのばす育て方を選択する。成長する過程で、少年が示す微妙な不安、寂しさ、優しさ、気弱さなどが、両親やコーチなどに大きな影響を与える。大人たちは、まさに手探り状態で、どうやって少年に接していいか、常に不安と葛藤の中で苦しむ。周囲が温かく見守る中で、少年は少しずつ前に進んでいく。

チェスの才能以外、まったくの普通の少年として描いたところがよいと思う。それに押しつけの感動劇ではなく、抑制のきいた演出も、ほんのりとした温かさを醸し出している。

この映画をみると、アメリカではボビー・フィッシャーの存在がどれほどのものだったかがわかる。当時、対局拒否をするフィッシャーの説得にキッシンジャーがのりだしたくらいなので、国民的ヒーローといってよいのだろう。才能ある少年が現れると、フィッシャーが来たと言うのは、象徴的な例えだ。