
「グズ茂」こと近松茂道シリーズの一作。
マンションの一室で起きた殺人事件。そばに負傷して倒れていた男が容疑者となり取り調べを受ける。だが、その男は記憶を失っており、自分が誰であるかもわからない。説明のつじつまだけはあっているが、どうも怪しい。
簡単に落とせるかなと思わせた記憶喪失の男だが、これがなかなかの強者。足で稼ぐといったスタイルで近松茂道と警察が地道な捜査を進めていく。しかし詰め切れず、徐々に難攻不落の様相を呈してくる。ここまでは、ゆっくりとそしてじわじわと楽しめるストーリーだ。
終盤はかなり急展開。さすがに一工夫ありといった終わり方だが、それまでのゆったりとした流れとは違って、あまりにも一気の解決で目が回る思いがした。
敢えて言えば、肝心の記憶喪失にからむ真相が、アッサリし過ぎている。寧ろ、そこを突っ込んでくれた方が、更に面白さが増したのではないかと思ってしまう。
本格推理ものに分類されると思うが、ただの謎解きだけでなく、それまでの物語を含めてかなり楽しめる作品だと思う。

