高木彬光のデビュー作。神津恭介が登場する。
刺青絡みの殺人事件。謎解きとしてかなり面白い。今にしてみれば、双子のトリックはありきたりにも思えるが、デビュー作でこの出来はやはりさすが。著者の「刺青物語」も読んだことがあるが、刺青に関する造詣の深さは驚くほどだ。少しうんざりするくらいに刺青の美についての記述がある。それが怪奇趣味とも感じさせる効果をもたらして、全体に毒々しい雰囲気を加えている。
神津恭介は少しスマート過ぎる人物設定。探偵はスーパーマンであるべきという作品は多いが、その中でも抜けた存在感がある。金田一耕助的な野暮ったさがあればと思うのは今の感覚かもしれない。
