内藤陽介著「パレスチナ現代史」の書評感想。

パレスチナの歴史について、第1次大戦後のオスマントルコ解体とイスラエル建国から、中東戦争を経て、現在までの約100年間をまとめた歴史本。

著者は郵便学者であり、郵便切手のデザインに反映される発行者の意図を、その時々の国際情勢にリンクさせて解説する著書がいくつかある。

内容は、中東の歴史が6割、それについての切手の話が4割くらい。切手解説といっても、マニアのための解説書というわけでなく、あくまでも切手にあらわれた歴史の話。

切手発行元である国家の思惑が、ハッキリと切手のデザインにあらわれるところが興味深い。それを読み解くことで、複雑な情勢を理解するためのポイントを、切手が明確に示してくれるのが面白い。とくに微妙なスタンスの修正までも読みとれるところが、切手の持つ侮りがたい歴史的資料価値を示している。

中東の歴史をわかりやすくまとめてあり、複雑なパレスチナ問題を知るための通史としておすすめの本。