映画「スラムドッグ$ミリオネア」(2008)の感想。

インドを舞台とした米英映画。アカデミー作品賞受賞。

ムンバイの貧困街出身の青年ジャマールは、無学であるがクイズ番組で大金を手にしようとしていた。しかし、不正を疑われ、警察で厳しい拷問を受ける。一時釈放された彼は再び番組に戻り、最後の問題に挑む。彼には壮絶な生い立ちがあった。

クイズ番組の進行と、主人公の悲惨な過去の体験がオーバーラップする展開。様々な妨害を受けながらも、奇跡的に正解を重ね大金を手に入れようとする姿は、スカッとする一攫千金ストーリー。一方で、悲惨な環境のもとで、互いに支えあいながら成長していく兄弟愛と幼なじみの女の子との愛情のストーリーは、なんとも切ない。

どちらもごく普通の話だが、双方がうまくかみ合って非常に流れがよく、胸にささる物語になっている。クイズ番組のハラハラ感と悲惨な状況を交互に見せられると複雑な心境になる。

何よりこの映画のポイントは、インドの貧困の状況がリアルに描写されていること。主人公が育ってきた目を覆いたくなるような生活環境。悪い奴らが跋扈して、警察ですら人権などまったく無視という社会。言葉にできないくらいにひどい状況だ。事実は小説よりも奇なりと言うが、現実の負のパワーを見せつけるような作品だ。