映画「山椒大夫」(1954)の感想。

森鴎外原作、溝口健二監督。田中絹代主演。

いわゆる安寿と厨子王の物語。没落貴族の一家が、運命のいたずらで奴隷のような境遇に陥り、苦難に耐える物語。ストーリー性も十分で、一夜にして国守に返り咲いた息子の周りは別世界へと変貌する。それでも自身の身分をかけてまで、世直しにとりかかる。そして母との再会となり、哀愁ただようクライマックスだ。

一方では、権力者たちは庶民のこういった悲惨さを知りながら、体制の維持のために見てみないふりをする。人々のあいだには、なにもできない諦めの心情が表情にあらわれている。当時の未成熟な社会構造が垣間見える。

画面には平安時代の粗末な生活ぶりが白黒画面で描かれ、日本的な雰囲気と時代背景が見事に再現されていて、海外からの評価が高いのもうなずける。