映画「内海の輪」(1971)の感想。松本清張原作。

松本清張原作。社会派ミステリーの清張作品とは少しテイストが違う作品。

簡単に言えば、身勝手な不倫の末に悲劇の結末を迎える男女の話。これといった事件は起こらないし、悪行の過程をつぶさに描くという話でもない。普通のサスペンスを期待して観るとあれっということになる。

男女間の微妙な心理変化がポイントになっているつくりだと思う。普段から死の意識を持ち、少し過激な愛欲をそれとなく見せる女。確たる定見を持たず小市民的な生き方の若い学者。だが、その辺のふたりの心理変化とやりとりがうまく機能していない感じがする。

ただ、岩下志麻の演技は秀逸。この脚本の中で女の内面をしっかりと表現するのはかなり難しいだろうに、見事に演じきっている。中尾彬は、まだ若い時代の頃で、後のあくの強さがまだでていない。

ストーリーはそれほどでもないが、岩下志麻を見るには最適な作品。