映画「ダイヤルMを廻せ!」(1954)の感想。倒叙式サスペンス。

ヒッチコック監督の倒叙式サスペンス映画。

妻の不倫を知った夫は、彼女を殺害しようと完全犯罪を企む。不倫相手と外出中に、金で雇った共犯者に殺人を行わせようとする。しかし、事は予定通りに進まず、共犯が妻に殺されてしまう。正当防衛であったが、警察は妻が故意に殺したとして逮捕する。

ヒッチコックの作品の多くは心理サスペンスものだが、これは刑事コロンボのような倒叙ミステリー。

舞台劇がもとになっているので、ほとんどがアパートの一室で話しが進む。そのため細かい背景説明がなく、全体的にテンポがよい。とくに冒頭の犯人が殺人計画を持ちかける場面は、セリフが流れるように出てきて、引き込まれる。

実行の段になって、予期せぬ計画の破綻により失敗に終わったかと思いきや、被害者の妻が容疑者になってしまう。ここからが本格的な心理サスペンスが始まる。そして一気に死刑執行の当日に飛ぶ。本当に無実の罪で死刑になってしまうのうのかのドキドキの終盤。

謎解きの鍵のトリックは秀逸。単に証拠を突きつける方法でなく、ここにハラハラする心理劇を持ってきたところはさすがにうまい。

トリックのよさ、レイ・ミランドの演技、グレース・ケリーの美しさと、見るところが多い傑作。