三浦英之著「五色の虹」書評感想

戦前、満州の首都新京に設立された満州建国大学。その卒業生が、どのような戦後を送ったかを取材したノンフィクション。

統制下での自由な教育というと、陸軍中野学校を思い浮かべるが、この建国大学でも世の中とは違った教育が認められていた。五族協和というスローガンのもとに、満州国の指導者養成のために、日本、朝鮮、中国、モンゴル、ロシアから集められた学生たち。入学試験はかなりの難関で、彼らは将来の指導者となる優秀な人材だった。

そういう彼らも、戦後の混乱で、その後の人生が大きく影響を受ける。世界を渡り歩くもの、大学教授、大事業家になるもの、そして国家首相まで務めたものがいる。しかし一方で、時代の荒波の中で苦境に陥ったり、命を落としたものも少なくない。

満州は、傀儡国家という形容詞をつけられるため、国家や政治、軍事をのぞけば、こういったエリート層の生活を語られることが少ない。当時の生活、その後の半生は非常に興味深い。

建国大学の学生の戦後を通して、満州国に光をあてたルポルタージュ。満州で何が起きていたかを知るうえで、非常に優れたノンフィクションだと思う。