古畑任三郎第37話「最も危険なゲーム 」(最後の事件)の感想。犯人役江口洋介。(ネタバレ)

最終回としてつくられたエピソード。(その後も製作は続いた。)犯人役は江口洋介。

過激な動物愛護団体のメンバーの一人が、刺殺されるという事件が起きた。その後、他のグループメンバーは、男のカバンを取り返そうと、偽装列車ジャックを計画する。実行するために公安部になりすまし、列車制御センターに侵入する。偶然、駅を訪れていた古畑は、事件の推移を見守るうちに、矛盾点に気がつく。

最終回なので中身盛りだくさんで、通常の45分では収まりきれないので、前後編となったのだろう。

このエピソードには、3つの柱がある。

(1)古畑の推理
(2)列車ジャック事件
(3)犯人の犯罪哲学と古畑

通常は、(1)の古畑の活躍を描くだけ。今回は更に、(2)の大がかりな舞台装置と(3)の最後の古畑対犯人の対決が加わっている。

(1)古畑はいつも通りに、鋭い観察力でいい仕事をしている。とくに今回は切れ味が鋭い。

(2)列車ジャックという設定は、映画「新幹線大爆破」や「踊る大捜査線シリーズ」を思い浮かべる。犯罪の背景が大がかりなので目を奪われて、どうしても古畑の推理過程がそれほど目立たなくなる。

(3)の犯人の人物像が、いつもの聞き分けの良い頭脳犯というだけでなく、ストーリーに絡んで、最後にもうひとつの話の素になっている。ここで普段はあまり見せない別の古畑が活躍する場面となり、謎解き専門家としての古畑の印象は弱くなる。

いつもの倒叙式推理ものという範疇に、エンタメ系刑事ものの要素を加えた作品に仕上がっている。映画にしてもよいくらいの厚みのあるエピソードだ。

刑事コロンボネタとしては、「策謀の結末」が、テロリストが犯人という似た設定になっている。こちらでも自分で決めたルールが証拠になって逮捕されているのは、本作品と同じ構成。

最終回にふさわしい出来だし、面白いには面白いが、いつものエピソードのテイストとは、少し違った感じを受ける。