映画「本陣殺人事件」(1975)の感想。中尾彬が金田一耕助。

中尾彬が金田一耕助を演じる本陣殺人事件。

角川の金田一耕助シリーズ以前の作品になる。市川崑監督のものと比較すると、こちらはよりリアルな映画に仕上がっている。市川作品はミステリーにコメディ要素などを取り入れたエンターテインメント作品だが、それと比べると淡々と謎解きが進行するミステリーという構成だ。

映像の撮り方は独特で目を引く。アップと遠目からののぞき見るようなカットが多く、ほとんどがそれらの組み合わせだけでつくっている。旧家の古い因習や閉じた村組織を表現するのには、なかなか成功していると思う。反面、ぶつ切り感があって、全体的な流れはあまりよくない。

中尾彬の金田一耕助は、70年代の若者の風貌で登場。あまり特徴のない探偵で、登場人物の中のひとりという役回り。謎解きもクライマックスで一人語りする方式ではなく、映像で種明かしをするという手法ととっている。

別バージョンのの金田一耕助を楽しめる。横溝正史の探偵小説をそのまま映像にしたような作品だ。