1995年の江戸川乱歩賞と1996年の直木賞を同時受賞した話題作。だいぶ前に一度読みかけたが、忙しくなってそのままにしておいた。しばらくぶりに読み直してみた。
主人公は、新宿中央公園で起きた爆弾事件の現場に偶然居合わせる。テロの犠牲者の中に、かっての学生運動時代の仲間がいることがわかる。現場に指紋を残しておいたことから、容疑者として疑いがかかる。主人公は、現場の状況と身の回りに起きるいざこざに腑に落ちない何かを感じ、事件の真相に迫ろうとする。
終盤前あたりまでは、背景に壮大な陰謀があることを感じさせる雰囲気があり、それに翻弄される主人公の行動に興味を引きつけられる。
人物の相関関係は、かなり精緻な構成になっている。ほぼすべての登場人物が最後はつながりを持ってくるのは、かなり技巧を凝らしたプロットだ。ちょっとやり過ぎの感もあるが、タイトルの意味をテロリストの傘下で皆が関係しあうととれば納得できる。
最後の方ではかなりテンポが速くなるせいか、次々と繰り出される種明かしに拍子抜けするような感じを受ける。ニューヨークと南米の話は、あまりリアリティが感じられない。
学生運動に端を発するという設定は、今となっては時代を感じさせる。酒の描写が多いのは、ハードボイルドとしての舞台道具というだけでなく、筆者の嗜好からかな。
構成はよいし、人物造形も魅力的。文章がテンポもよく、ぐいぐり引っぱられる。ハードボイルドの秀作だと思う。