渡瀬裕哉著「なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか」書評感想

成熟した民主主義で起きているアイデンティティの分断について考察した本。

民主主義が成熟するとなぜアイデンティティの分断につながるのか。選挙マーケティングで行われるアイデンティティ分断の戦略、リベラルと保守はどのように分断をつくったか、独裁体制下でのアイデンティティ分断など。

単なる選挙分析、国際情勢解説といったものではなく、アイデンティティという切り口からの斬新な見方は面白い。とくに選挙マーケティングについての詳しい解説は興味深い。有権者の行動は操れるものだという恐い事実。保守の支持者なら、定見を持たない争点は、保守党の主張を支持してしまうのその例だろう。

この本は、政治、選挙、経済、国際情勢といった分野だけでなく、世の中の出来事の全般についても本質的なことを突いていると思う。よく自己啓発本などに書かれている自分へのレッテル貼りもそうだし、話を拡げれば職業や社会的役割についても当てはまるだろう。

いろいろと考えさせられる本。おすすめ。