神津恭介シリーズ平成三部作の第2作。
会社オーナーの資産家一族に起きる連続殺人事件。遺産目当ての事件の線で捜査が進められる。だが、重要容疑者も殺されてしまい、真相究明は難航する。伊豆に引きこもった神津恭介が依頼を受け、鋭い推理で事件解決に導く。
事件は資産家一家という小さなサークルで起きる。関係者は限られるし、犯人の目星はある程度はつくのではと思って読み進めた。ところがなかなか一筋縄ではいかない。ストーリーは二転三転するし、肝心なところをぼやかせているような展開だ。
神津恭介が登場して、ほとんど安楽椅子探偵のように解決してしまう。凝りに凝ったトリックだ。かなり無理筋なのは確かだが、こうでもしなければ凡庸な作品になってしまっただろう。著者の晩年の作になるが、トリックをひねり出す筆力に改めて脱帽の作品だと思う。