ダルジール警視を主人公とする警察ミステリーシリーズの第11作。
シリーズの中でも特に有名な作品。ダルジール警視の独特なキャラで楽しませてくれる。探偵役なのに切れる頭脳があるわけではなく、猪突猛進型の捜査を行う。あくの強い性格が武器で、横柄な態度で捜査を進め摩擦を起こす。スマートさとは無縁だ。
冒頭からダルジールが事件の目撃者となって波乱含み。容疑者の自供を頭から信じない。ただ、この容疑者はとにかく頭が切れる。口先八丁でたくみな供述を続け、つけいる隙を見せない。ダルジールは上層部からも非難を浴びながら、コンクリートを壊してまでも真相に近づこうともがく。
一方で正体不明の女性から自殺予告の手紙が次々に届く。ダルジールは、こちらには重きを置かないが、書き手は目下の事件についてのヒントも手紙で知らせてくる謎の展開になる。
どう攻めても真相を隠し続けて沈黙をやぶろうとしない重要容疑者と自らの秘密を明かすことで沈黙をやぶろうとする手紙の書き手。沈黙をめぐる対照的な二人だが、ダルジールは容疑者に突進するのみ。命を助けるなら、手紙の女だと思うが。部下が最後に奮闘するが、それはダルジール警視の仕事だろうと思う。神を演じているのに。何と理不尽なことになってしまったのか。あのキャラでは仕方がないか。
言葉遊びのようなユニークなセリフが続くので、それが面白いと思う人は楽しめるかな。日本ではあまり受けないと思うが。深い作品だ。



