NHKBS 特集ドラマ「犬神家の一族」の感想。

NHKの金田一耕助シリーズ第4作になる。これまでの3作は、力作であるのはわかるが、ドラマとしては少し空回りしているような感じを持っていた。それでも回を重ねるごとにまとまってきていたので、今回はどうかなと期待して観てみた。

犬神家の一族は、どうしても市川崑監督の映画と比較されてしまうのがつらいところ。それを考えてもかなり出来のよいドラマに仕上がっていると思う。

ミステリーとしての謎解きが中心のドラマづくりになっている。わかりやすくするために、犬神家の弁護士をワトソン役に仕立てたところがうまい。彼が出るシーンを随所にちりばめ、人間関係の背景や謎解きを少しずつ説明していて、流れにのりやすい。複雑な横溝作品のトリックを扱うには、よい方法だと思う。

映像は、相変わらず美しい。つくりこんだセットが醸し出すレトロ感は、昭和初期の風物を見事に再現している。そうかといって、凝りすぎてストーリーを邪魔することもなく、落ち着いた雰囲気で観ることがきる。

登場人物の中では、大竹しのぶの存在感のある演技がいい。犬神家の長女としての強面感と財産に執着する人間の醜い欲、そして息子佐清への愛情が入りまじって、実に複雑な人物像をうまく演じている。

最後のオチには少し驚いた。「愛」について、くどいくらいにくり返し描写があったのは、そのための伏線であったのか。衝撃のラストではあるが、やはりとってつけたような感じは否めない。既に作品として完成度の高いものになっているので、付け加える必要はなかったのではないか。

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【特集ドラマ】犬神家の一族
2023年4月22、29日 21:00-22:30