NHK朝ドラ「スカーレット」の感想。朝のテンポに乗れなかったドラマ。

朝ドラを全部みるのは「半分、青い。」以来だ。

元気な女性が周りに助けられながら、目標に向かって進むという朝ドラ鉄板のパターンは踏襲している。だが、これまでの作品とは雰囲気が違っている。

最初から荒木荘くらいまでは、話が広がっていって、その後が期待できる非常に面白い展開だった。

それから信楽に戻ってから一気にトーンダウンとなった。肝心のところを描かない手法が繰り返されたからだ。

一番の目玉になる女性陶芸家として認められるまでの過程と、それに伴う葛藤や苦悩に触れたのはごくわずかの回だけ。大きな出来事の余韻から本筋を描いていく構成は最後まで続いた。

NHKには「大相撲 幕内の全取組」という、取組のみを切り取ったダイジェスト番組がある。このドラマは取組み以外の部分をつなげた逆大相撲ダイジェストのような構成。これだとテンポに乗りにくい。

それから劇中に主人公は周辺数メートルの範囲だけで生きているという意味のセリフがあったが、まさにこのドラマの後半は数メートルの範囲で出来事が起きていた。

登場人物はたくさんいるのに、次々に主人公の側に現れて消えていくというパターン。人物たちが重層的に描かれていないので、ただの舞台装置となって生き生きとしていない。夫でさえも、結婚までのシーンの後は、重要な役割は果たさなかった。とくに後半この傾向が顕著になって、ミニストーリーが繰り返される単調な話になった。

2月末には、スピンオフと思われるようなサブストーリーに入っていくのも異質な展開。

最後の息子の闘病記に至って、ようやく細かな描写が入るようになったが、朝のドラマとしてはかなり重いテーマだ。

主演の戸田恵梨香の演技はよかった。孤軍奮闘といったなかで、熱演が光った。

元になった実話があったようなので、思うような構成にもっていけなかったのかもしれない。朝ドラを見て元気になるための、明るさ、軽さ、テンポのよさが感じられないドラマだったのは残念。