著者はアラビア語専門の元外交官。今の中東と中東外交のあり方についての本。
中東と言えばテロと石油。マスコミで伝えられるニュースのほとんどはこの話題だ。
日本の現在の中東とのつきあい方は悪くないと思う。余りに深入りしすぎると紛争に巻き込まれる。石油ビジネスの相手というポジションを占めながら、一方で関係の強化を図っていく。今の中東の国々は脱石油で生き残るための国家作りに取り組んでいる。そういたところに入り込むのも関係強化には有益となるだろう。
一方、外交官にとって中東はやりがいある地域だろう。紛争と宗教、そして独特の風俗習慣が組み合わさったパズルを解くような微妙なやりとりが必須になる。場合によっては命の危険になる場所に赴かなければならない。なにせ日本の石油はこの地域に完全におんぶしている状態が続いているからだ。
著者が指摘するように、一般の中東についての関心が低いことと、外務省内でもアラビストが必ずしも厚遇されていないことが問題。外務省の出世レースを見ても、アラビストが主要ポストにつくことは稀だ。中東の大使のポストに専門外の人が就任することも珍しくない。中東は、欧米とともに外交の柱になるべき地域だろう。
外務省から見た中東という視点で書かれた有益な本だと思う。