仏映画「シモーヌ フランスに最も愛された政治家」(2022)の感想。

女性初の欧州議会議長となったフランスの政治家シモーヌ・ヴェイユの人生を描く。

フランスの政治家で女性初の欧州議会議長となったシモーヌ・ヴェイユ。非常にパワフルな政治家で、フランス版のマーガレット・サッチャーと言えるだろう。だが、立ち位置は違う。シモーヌは徹頭徹尾の人権派の政治家だ。人工中絶の合法化、エイズ患者、移民、犯罪者の待遇改善と、次々と大きな仕事を成し遂げていく。

彼女が活躍したのは今ほど人権が重視されていなかった時代。周辺の理解をなかなか得られないのに頑張り通す背景には、自身がホロコーストの生き残りでもあり、家族を収容所で亡くしているというつらい過去があった。

画面は、過去と現在を行き来しながらの進んでいく。現在奮闘中の彼女の姿のあいだに、過去の筆舌に尽くしがたいほどの過酷な経験が挿入され、深い人物像が際立ってくる。後半生を演じたエルザ・ジルベルスタインの演技が重厚でいい。にじみ出る過去の苦悩と戦う女性の強さを見事に表現している。

真の人権派の政治家の生涯。なかなかの力作だ。