渡瀬裕哉著「メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本」書評感想

今年のアメリカの大統領選挙と政治を、主に保守の動向からみた詳細分析。

いつまでもトンデモ大統領として扱われるトランプだが、行動は保守派の影響を受けた選挙結果に大きく左右されていて、至極当然なものであることが示される。日本のメディアは、CNN、ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト等、左よりのメディア情報ばかりをもとにしているため、こういった保守層の動きが伝わってこない。保守層内で起きている微妙な駆け引きによって、政権の運営方針が決められている現状を読み解いている。更に、民主党を含めた大統領選挙の見通し、外交方針、選挙後の見通しなどについて、説得力のある分析が示されている。

日本のニュースではほとんど伝えられない保守層の動きの分析は注目に値する。そういった観点から、スティーブ・バノンの過大評価、外交は中南米と中東が最優先、ボルトンの強行言説は選挙のための方便など、一般に流れている報道とは違った見方を提示している。

今のアメリカ政治を知るうえで、非常によいガイドブックであるし、情報の見方についても改めて考えるきっかけをつくってくれる本。外国としては一番情報量のアメリカの大統領選挙ですら、的確な情報に接するのは難しいという事実は、ニュースをみるうえで常に認識していなければならないと思う。おすすめ。