映画「Wの悲劇」(1984)の感想。女優薬師丸ひろ子の魅力の作品。

この映画がヒット作であることは知っていたが、今までに観たことはなかった。BSで放送があったので、興味半分で鑑賞してみた。

駆け出し劇団員の主人公は、オーディションで端役を射止める。しかし将来に希望の持てない状況であることに変わりない。そんなとき、大女優のスキャンダル事件に身代わりとして巻き込まれ、飛躍のチャンスをつかむ。

原作のWの悲劇は劇中の舞台劇となっていて、本編はそれを演じる劇団員の主人公の物語になっている。こういう変わった構成では、本当にうまく行くのかと思ってしまうが、予想に反して非常にうまく話が流れる。

恋人役の世良公則との関係は、最低限のものであっさりとしているのがいい。劇中の舞台劇Wの悲劇も、身代わりという点で本編とオーバーラップしていて、うまい構成になっている。

この映画のキーワードは「女優」。女優として成長していく主人公の葛藤が描かれるが、その対極に大女優が配置される。三田佳子がそのまま大女優を演じている。三田佳子演じる大女優と駆け出しの主人公の対比が効果的。

スクリーンには、最初から最後まで薬師丸ひろ子がほぼ出ずっぱり。決して広告塔として使っているわけではない。薬師丸ひろ子は、難しい役柄を見事に演じている。さすがに角川に選ばれた女優だと思わせる好演。脚本もいいし、女優薬師丸ひろ子の力量が存分に発揮された作品。予想以上の秀作だった。