バルドゥイン・グロラー著「探偵ダゴベルトの功績と冒険」の感想。オーストリアのコナン・ドイル。

20世紀初頭のウィーンが舞台。素人探偵ダゴベルトは、社交界で起きる様々な事件を解決する。全9編の短編集。

オーストリア帝国末期の上流階級が舞台というだけでも変わっている。この時代の社会や出来事が詳しく触れられているわけではない。ただ、貴族階級の面子を気にする習性がくどいくらいに出てくるので、そこから定点観測するように、当時の世相を感じることはできる。

起きる事件は、殺人や凶悪犯罪とはほど遠いものばかり。盗難、恐喝、詐欺、浮気などのちょっとしたスキャンダル。ダゴベルトは、事件解決のみならず、体面を保つための方策も提供して無難に事件を解決する。まるで貴族のための駆け込み寺だ。

謎解きとしてはライトミステリーで、刺激を求める今の作品の対極にある。優雅な気分で軽く謎解きを楽しむにはうってつけ。