映画「他人の顔」(1966)の感想。安部公房原作、仲代達矢主演。

安部公房原作。主演は仲代達矢。

化学研究所に勤める主人公の男は、事故により顔に怪我を負い、包帯を巻いたままの生活を余儀なくされる。すると周囲とのぎこちない関係が生じるようになり、医師に相談して人工の仮面をつけるようになる。他人の顔となった主人公は、今までとは違った人として生きるうちに違和感が生まれてくる。

原作が安部公房の小説で、脚本も安部公房が担当している。かなり理屈っぽい映画だ。意味深長なセリフが多く、小説を読むように注意しながら観る必要がある。

顔というのは人と関係をつくるうえでの重要なアイコン。周りの人たちは、怪我で顔をなくした男とうまく関係が保てなくなる。見た目だけで対応を変える周囲にいらだつ主人公は、仮面をかぶってまったくの他人になってしまう。中身は同じなのに、顔が違うだけで同じ扱いをされなくなるが、自分では新しい人間になることができると考える。そこで予想もしなかったことが起こる。自分でも自分自身をしっかりととらえられなくなってしまう。

アイコンは単なる仲介物であるように考えがちだが、それがないと他人と関係をつくるのに支障を来すだけでなく、自分自身も宙ぶらりんのような状態になってしまう。アイコンである顔の本質的なところを鋭く指摘している。

若い頃の仲代達矢はいい声してるね。