映画「殺人捜査」(1970)の感想。

1970年公開のイタリア映画。

冒頭でやけに安っぽい雰囲気の中で、ベッドで愛人が男に殺される。あの路線の三流映画かと思って調べてみると、アカデミー賞外国語映画賞作だとわかってびっくり。

犯人は、殺人課の課長から公安部長へ昇進したばかりのエリート警察官。押し出しが強いタイプで、仕事はできるがかなり傲慢な性格。途中まで、警察の身内が犯人のミステリーだと思って観ていたが、展開は思わぬ方向へ向かっていく。

この男は、自分が犯人である証拠を隠そうとはせず、自ら犯人であることを示すような行動までもするようになる。それでも警察内では、彼の権力に怯えて敢えてそれを指摘するようなことはない。取り調べを受ける市民たちも同じような行動をとる。上層部までもが、わかっていながらも事実を隠蔽しようとする。

本人は、一応自責の念を少しは持っていて、一時的に罪の意識に苛まれるが、そんなものはすぐに吹き飛んでしまう。権力の中には、悪人になるための環境を無条件で与えてくれる本質があるという描写だ。

体制とその権力の横暴さと、それを受け入れてしまう社会体制を強烈に批判する作品だ。そして善悪の倫理が崩壊している社会全体に対する嘆きでもある。

主演のジャン・マリア・ヴォロンテのアクの強い演技は見事。