映画「黒線地帯」(1960)の感想。

1960年公開の犯罪サスペンス映画。石井輝男監督、天知茂主演。秘密売春組織を追うトップ屋が殺人事件の犯人に仕立てられ、自らの疑惑を晴らすために犯罪組織の内幕を暴いていく物語。

天知茂が演じるのは、トップ屋の町田広二。自分を陥れた犯罪組織を追いかける記者兼探偵のような役柄で、持ち前の渋い演技がなかなかよい。危険な裏社会に単身乗り込み、手がかりを一つずつつかんでいく姿には、ハードボイルド映画の雰囲気も漂っている。

麻薬、酒、賭博、美しい女性と、犯罪映画に欠かせない要素がひととおりそろっている。ストーリーそのものは単純だが、事件を追ううちに闇の組織の全貌が徐々に明らかになっていく構成なので、飽きることがない。複雑な謎解きよりも、軽いノリで楽しめるサスペンス映画といったところだ。

舞台となるのは昭和30年代半ばの東京と横浜。当時の歓楽街や裏社会の雑然とした雰囲気がよく出ている。一方で、表通りにはまだ飾り気の少ない都会の風景が広がっており、その対照も面白い。高度経済成長期に入りつつあった日本の都市の姿が、犯罪映画という形で映し出されている。

物語の後半、組織の内幕が明らかになると、展開は一気にアクション中心となる。追跡や格闘を交えながら、テンポよく結末まで駆け抜けていく。多少都合のよい展開もあるが、娯楽映画としては十分に楽しめる。

特別に凝ったストーリーでもなく、意外性に富んだ作品でもない。しかし、天知茂の存在感と昭和の裏社会の雰囲気がうまくかみ合い、全体としてよくまとまっている。80分という短い上映時間に犯罪サスペンスの面白さを手際よく詰め込んだ、なかなか味のある作品だ。