映画「金環蝕」(1975)の感想。山本薩夫監督。

もう何度も観ているこの映画。筋を知っているのに、何回観ても面白い。石川達三の小説が原作、山本薩夫監督作品。

1969年のダム建設工事に絡む汚職事件。政官民にマスコミが加わり重層的に話が進行する。巨額予算が使われる公共工事の裏で、わるいやつらが裏で何をやっているのか。それぞれの立場での駆け引きと、それを暴こうとするマスコミの綱引きがリアルだ。利権には人が集まるのは今でも同じだが、規制がゆるかったこの時代の話なのですさまじい。これぞ裏政治と言える。

出演者たちの演技が秀逸。国会議員三國連太郎の下品さ、官房長官仲代達矢の鼻持ちならないエリート臭。金貸し宇野重吉のしたたかさ、公団総裁の永井智雄の能面顔、建設会社専務西村晃のいやらしさ、無鉄砲な新聞記事高橋悦史の正義感。

70年代には数々の優れた映画がつくられたが、その中でも「砂の器」や「華麗なる一族」と並んで傑作に入る作品だと思う。