映画「雁の寺」(1962)の感想。若尾文子主演、川島雄三監督。

原作は水上勉で直木賞受賞作。川島雄三監督、若尾文子主演。

京都の寺の和尚は境内に愛人を囲っている。寺には13歳の見習い小僧が住み込み、和尚から厳しい指導を受ける。和尚の愛人は、次第に小僧に同情するようになる。ある日、和尚が外出先から戻らず行方不明となる。

前半は、小僧の屈折した心理描写がいい。人に言えない出自を持ち、理不尽なほどに厳しい日々の修業生活。和尚の生臭坊主ぶりと相まって、鬱屈した心理が画面の陰影に投影されているようで、引き込まれる映像だ。

後半は一転してミステリー仕立てとなる。謎解きと言えるほどのトリックはないが、前段の心理描写からのストーリー転換で、更に引き込まれてしまう。

和尚役の三島雅夫はこの時代の作品でよく見かける役者さん。気弱な役から横暴な役まで、幅広い役柄を演じ分けている。この作品では、まさに俗物といった坊主を怪演している。