三島由紀夫の金閣寺が原作。市川雷蔵主演、市川崑監督。
こんな難しい小説をどうやって映像化しているのだろと思いながら観てみたが、思いの外よくできていて引き込まれてしまった。とくに主人公市川雷蔵と仲代達矢との対比が鮮やかだ。吃音と不自由な足というハンディを負っている二人の世の中への向かい方。仲代達矢のやけっぱちのごとくしたたかに生きようとする姿勢とそのうちに潜む悲しさ。一方の雷蔵の内にこもる不安定な心持ち。ともにすばらしい演技だと思う。
そして肝心の放火の原因となる主人公の美意識については、心の中に入り込むような演出はしていない。複雑な美への憧憬を映像で表現するのは難しい。あくまでも主人公の表情や動作、そして背景から描こうとしている。驟閣寺の美しさに救いを求める微妙な気持ちは、観る側も推測するしかない。下手な描き方をするよりも、この方がずっと作品が締まる。さすがに映像にこだわる市川崑監督らしい。

