著者はキャリア外交官で元外務省研修所長。外務省研修所の公式の通史というわけではないが、かなり充実した内容が記されている。
歴史的な背景の説明では、明治の時代から外務省では人材育成に力が入っていたことがわかる。当時の列強に追いつくためであるが、その受け皿として研修所の体制づくりが急務であったのだろう。
現在のシステムは、外交官に必要な素養を得るための様々な講習が備えられていて、しっかりした体系的なメニューが提供されていると思う。
外務省と言えば、肝心の外交官の外国語研修だが、留学による現地での習得がメインで、研修所では補完的なプログラムにとどまっている。
今の時代、ある程度の大きさの組織であれば内部研修のプログラムを持っているのがふつうだ。本書は、多少冗長な説明もあるが、国家公務員がどのような研修を受けているのかを知ることができ興味深い内容だ。