鎌倉殿の13人 第20回「帰ってきた義経」の感想。傑作ですね。

まだ、折り返し前なのに、すでに殿堂入り当確が出ている大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。毎週楽しみに観ている。

とにかく脚本がいい。シリアスさとコミカルさのバランスが秀逸。最初は少しコミカルに振りすぎかなと思っていたが、徐々に粛清の嵐が吹き荒れてくるうちに、ちょうどよくなってきた。

そして流れるようなテンポのよさ。次々に波風が立つが、サッと切り上げて次に移っていく。木曽義仲の最期や平家滅亡もあっさりとしていた。

前半、注目の的となったのは、サイコパス義経という人物設定。濃いキャラクターたちの中でも、ひときわ目立ち、主役以上の存在感がある。もっと空気読めよと言いたくなるが、毎回浮き世離れした言動に目が釘付けになる。

この義経の最期をどう扱うのかと思っていたら、さすがにうまくまとめた。大立ち回りの末に討ち死にするような当たり前のシーンはない。サイコパスらしい哀愁ただよう終末の描き方は見事。

この回のタイトルのつけ方もうまい。「帰ってきた義経」が出た直後に藤原秀衡への帰還の挨拶。当然、次回以降に「義経、散る」のような回が用意されていると思う。ところが終盤、討ち死にシーンをすっ飛ばして、いきなり頼朝と首桶の対面。そして最後にもう一度タイトルが出る。「真田丸」のナレーション関ヶ原よりも、完成度があがっている。

放送前に、「鎌倉殿の13人」とは何とダサいタイトルなのかと思っていた。「北条義時」でいいのではないかと。話が進むにつれて、義時はワトソン的な役割で、鎌倉の群像劇を義時の目を通して見たドラマであることがわかってきた。「北条義時」では、「名探偵助手ワトソン」のようなピンぼけしてタイトルになってしまう。いわゆるグランド・ホテル形式のドラマなんですね。

天に舞い地を跳ねるごとく、三谷幸喜脚本が冴え渡っている。オワコンと思っていた大河ドラマで、こんな面白い作品に出会えるとは思っていなかった。